2023年度クラシックマウス carmine 解説 ①メカ編

2023年度クラシックマウス 機体解説記事になります。

今回はメカ編になります。

 

機体の概要は↓

b4rracud4.hatenadiary.jp

●カーボンフレーム

昨年度に引き続き、カーボンフレーム上にコンポーネントをマウントする方式を採用しています。

ここ数年のDCモータを採用したマウスでは基板にフレームの役割を持たせる、通称「板マウス」というスタイルが一般的です。板マウスは構成部品を最小限に抑えることで軽量化できる点が優れていますが、高速でクラッシュした場合、基板が衝撃をモロに食らうため電子部品がクラックする危険性があります。

私の機体ではカーボンフレームが基板より僅かにせり出しており、クラッシュ時にフレームが衝撃を受けることで基板へのダメージを軽減することを狙っています。加えて、フレーム全部が肉抜きされていることで意図的に撓みやすくなっており、衝撃を逃がす設計となっています。

実際、調整中に衝突して宙を舞うことは日常茶飯事でしたが、基板がクラックしたことは一度もありませんでした。

ただし、これも完璧にうまく行ってたわけではなく、実際は衝突時にフレームの根本まで撓んで吸引ファンに接触してしまい、吸引モーターにダメージが入ってしまう様でした。

カーボンの板厚はモーターマウントが2.0mm、それ以外で1.0mmを使用しています。本当はもう少しだけ薄くしたいのですが流通している板厚にバリエーションが無いので肉抜きやポケット加工で軽量化しています。

なお、カーボンは自前のCNCで加工していますが、個人でカーボンを加工するのはオススメしません。最近では外注サービスが充実しているのでそこに注文するのが賢明です。



●足回り

昨年度までは駆動用モーターにmaxonのdcxシリーズを使用していましたが、今年は海外通販で入手可能な安価なコアレスモーター(φ8.5×23mm 所謂8523)を使用しました。これはdcxよりも安いモーターのほうがマイクロマウス向きの特性をしていると考えたためです。具体的には最高回転数やトルク定数が近いサイズで比較して優れています。代わりに効率や個体のばらつきの面では劣っていますが、それを補って余りある性能と考えています。

同じ8523サイズでも購入先によってかなり性能に差があるため、複数購入してインダクタンスやトルク定数を測定して最もよさそうな個体を選別して使用しています。各種定数の測定方法はu氏やk氏のブログを参考にさせていただきました。

hidejrlab.blog104.fc2.com

kojimousenote.blogspot.com

また、マイクロマウスでは基本的に定格を無視して使用することが当たり前です。当然そんなことやっていればすぐに壊れてしまいますが謎コアレスであれば1個数百円程度なので運用コストも安く済み、精神的にも楽です。ただしいちいち修理する手間がかかるのでモーターにプレートを接着してねじ止めにすることでメンテナンス性を確保しました。

なお、ギヤ比はスパー71:モーターピニオン15です。(エンコーダは29)

スパーはmisumiのCナビ、ピニオンはkkpmoから手配しました。

●低イナーシャ

高速でターンするためには機体のイナーシャを削減する必要があります。今作では徹底的な低イナーシャを図りました。機体の構成部品を重い順で旋回中心に配置した事で極限までイナーシャを低減しています。また、重心が車軸上に乗るように設計したつもりでしたが、実際は若干後ろ重心になっていました。

このあたりのコンセプトは同サークルメンバーであるa氏の機体を参考にさせて頂きました。(キャンバーはつけてません)

haido.blog.jp

 

●吸引ファン・モーター

去年までは吸引モーターにブラシレスモーターを採用していました。しかし、ブラシレスモーターはコアレスモーターと比較して回転数が低い傾向があるようです。ファンの吸引力は回転数に比例するため、吸引力も伸び悩みました。そこで今年は8520サイズのコアレスモーターを採用したことで回転数が増加し吸引力が向上しました。

なお、吸引システムの要素で最も吸引力(=静圧)に影響があるのはファン径と言われています。逆に、ファンの数や羽の高さはあまり静圧向上に寄与しないようです。このあたりはu氏の記事を参考にさせていただきました。

http://hidejr1053.web.fc2.com/vq1.html

ちなみに今作のファンは直径φ30mm、羽高さ3mmでした。かなり薄いですが大体400gくらい吸えることを確認しています。

 

●吸引スカート

吸引スカートの材質は秋月の部品袋を採用しています。スカートの材質は硬度や厚さが丁度良いものを選定する必要があり、色々試した結果この素材で落ち着きました。

また、スカートは直接機体に貼り付ける派と枠状スカートを追加する2段派がありますが、今回は前者としました。後者ではスカートの接地具合を1次スカートの厚さで調節できますが、その分車高が上がるので今回は省きました。

↓前作のスカート構造 赤い枠が1次、半透明のフィルムが2次スカート

 

●カウルフレーム

そもそもブラシレスを採用していた理由はデザイン的な理由があります。吸引モーターにコアレスを採用すると車体からモーターが突出した構造になります。私はこれを煙突と呼んでいて見た目が気に入らなかったのでファン内にモータを格納することで見た目をスッキリさせていました。今回は性能面を優先させましたがデザイン性も損ないたくなかったため、モーター前面にカウルフレームを取り付けることで極力機体外形が連続的なシルエットになるよう工夫しました。これによりデザインに統一性が生まれ不自然さが無くなったと思います。

カウルフレームはカーボン板を切り出して黒色のエポキシ接着剤(メタルロック)で組立てています。カウルはモーターフレームと□2mmの真鍮製のアングル材でねじ止め固定とし、取り外せる構造にしました。アルミだとタップ穴の関係である程度大きくなります。ここは目立たないサイズに抑えたかったので硬度の高い真鍮を採用しています。

性能向上にはほとんど寄与しませんが機体の顔となる部品だったのでかなりこだわりました。なお、性能的に全く無意味な部品という訳ではなく、モーターマウント同士を繋ぐことで機体のロール剛性を高めたり、基板同士をつなぐフレキケーブルを収める役割もあります。

ちなみにカウルが無いとこんな感じ。 コレジャナイ感...

 

●タイヤ

ここ数年のDCマウスでは京商mini-zシリーズ用スリックタイヤが良く使われています。タイヤ硬度が20~40度で用意されていますが、多くの方は20度を採用しています。理由としてタイヤ硬度が柔らかいほど弾性変形する量が大きいため、路面とのねじれの許容量に余裕がありグリップが破綻しにくいためと考えています。

しかし、今回は敢えて40度のタイヤを採用しました。理由はタイヤ硬度が高い方がスリップ角が小さくなると考えたためです。スリップ角が大きいとターンが膨らんでしまうので極力抑えたいです。スリップ角が発生する要因はタイヤの弾性変形なのでタイヤ硬度を上げることでスリップ角を抑えることができると考えました。さらに薄型のタイヤを採用しバネ定数と接触面積の増加を狙っています。

許容ねじれ量が少ない欠点は吸引力を増やしグリップを確保することで解決しています。

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●テール

2輪マウスの場合タイヤの接地面を中心にピッチ方向にカタつきが生じますが、これが大きいと加減速性能に悪影響があります。

カタつきを抑えるためには車高を下げるか車体長さを伸ばす必要がありますが、車高を下げ過ぎると段差に弱くなるため車体長を伸ばすため機体後方に尻尾状のフレームを拡張しました。

 

●おまけ

どうでもいいことですが、カーボンフレームを採用した場合、機体全体が黒くなってしまうため迷路床面の黒色に溶け込んでしまい視認性が悪くなります。

そこでカーボン端面を赤色マーカーで着色することで視認性向上を狙いました。実際のところ視認性はあまり変わりませんでしたが、写真映えする見た目になったので満足です。

ただし塗膜が弱く、衝突や擦れで剥げてしまうので定期的に塗りなおしていました。

全く持って性能に寄与しないところですが、こういったところに拘れるのも趣味工作の良いところですね。

 

 

次回はハードウェア編です!