2023年度クラシックマウス carmine 解説 ②ハードウェア編

2023年度クラシックマウス 機体解説記事になります。

今回はハードウェア編になります。

 

機体の概要は↓

b4rracud4.hatenadiary.jp

●回路図・配線

drive.google.com

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回路図と配線図です。

正直回路系は体系的に学んでいたわけでは無いため、かなりお粗末な作りとなっています...

回路の書き方も自分が分かればいいやで適当に書いているので文字が被ってたり線が見づらかったりしますがご容赦ください🙇

先駆者様方の公開している回路を参考につぎはぎしているようなものなので、参考にする場合は自己責任でお願いいたします✋😅

 

●CAD

CADはEagleを使用していました。 機能がシンプルで使用感が直感的に分かりやすいため気に入っていました。

しかし、Eagleはそのうちサポートが終了するため、新しく採用する場合は他のCADのした方がいいです。

www.autodesk.co.jp

自分も代替CADを何にしようか悩んでいますが、Fusion 360 ElectronicsかKiCADが無難かなと思います。

 

●電源

電源はバッテリー(LiPo 3S 11.1V)をDCDCコンバーター(MYLSM00502ERPL)で5Vに落とし、LDO(MIC5219-3.3YM5)で3.3Vを作っています。

www.murata.com

akizukidenshi.com

LDOの降下電圧差が大きいと発熱が大きく効率が悪いのと、DCDC単体だとリップル電圧が懸念となるため組み合わせて使用することが多いようです。

DCDCは4Sまで対応することを想定して選定しました(元トレーサーチャンピオンから教えてもらいました)が、さすがにオーバースペックでしたね。

また、電源スイッチ部は物理スイッチの入力でPchMOSFETを駆動する方式を採用しています、小型のスイッチは電流許容が限られるため、FETのゲート駆動のみに使用し主電流はFETから流しています。この回路は学生時代に先輩が使っていたのを真似させて頂きました。

また物理スイッチはGW-12LCPを使いました。操作感が心地よく、耐久性が高いです。LED付きなので見た目も良き。

www.nkkswitches.co.jp

 

MCU

MCUSTM32L4P5CGU6を採用しています。

STM32L4P5CGU6 | STM32, STM8ファミリはSTの32bit/8bit汎用マイクロコントローラ製品

QFN48pinでフラッシュ1MByte、RAM320KByteと、パッケージサイズが小さくメモリが多いことが特徴です。動作周波数が昨年度まで使用していたF722の216MHzと比較して低いのがネックで、このためにソフトウェアで少し苦しみました。

このMCUはトレーサーに参加していたサークルメンバーが採用していたもので、パッケージサイズが理想的だったので私も採用しました。新規採用のMCUだったので、フラッシュ周りの仕様が前作と異なり苦しめられましたが、サークルメンバーに情報共有してもらい解決しました。MCUに限らず、大学サークルなどで活動している方は周りの人が採用している部品を採用すると情報共有ができるのでオススメです。

 

●IMU

IMUはISM330DHCXTRを採用しています。

www.st.com

ジャイロの感度が最大4000dpsまで対応しているのが特徴です。最近の上位勢は最高角速度が2000deg/sを超え始めているので、4000dps対応が必須でした。実際、この機体も最短走行時の2000dpsを超えています。

このIMUはパッケージがLGAになっています。QFPと異なり端子が側面に出ていないため、手はんだする難易度が格段に高いです。リフローかヒートガンを使用してはんだ付けすると比較的楽です。

また、パッケージサイズが小さいジャイロは振動の影響を受けてしまい、正しい角速度を出力しない場合があり過去に苦しめられた経験がありました。そこで、IMUを別基板に分離し、ゲル状の両面テープでソフトマウントすることで振動を吸収させていました。なお配線にはポリウレタン線を使いましたが、メンテナンス性や耐久性に難があるためオススメしません。


●モータードライバー

駆動用モータードライバーはMP6551GQB-Pを採用しました。

https://www.monolithicpower.com/jp/mp6551.html

フットプリントが小さい割に電流が5Aまで流せるので使い勝手が良いです。マイクロマウス以外のロボコンでも使用例が多いようで人気の型番です。

 

●電流センサー

今年は駆動用モーターの電流FBのため、電流センサーを実装しました。型番はAD8418AWHRMZです。

www.analog.com

これに0.015Ω 1Wの抵抗を繋いで電流測定しています。センサーからは電流に比例した電圧が出力されるのでIMUからAD変換して電流測定しています。このあたりの素子選定は先駆者様を参考にさせて頂いたので自分でもあまり詳しくありません...

 

●外付けADC

上述の電流センサーを追加したことでIMUだけで端子数が足りなくなったため、外付けADCとしてMAX11125ATI+を追加しました。この素子は最大8chのアナログ端子をSPIで扱えます。元々、前作でセンサー基板を分割化した際にフレキケーブルで渡す信号をデジタルにしたかったので採用しましたが、今回は単純に端子数を補う用途で使いました。ただ端子数を増やすためであればマルチプレクサを採用した方が楽だと思います。

 

エンコーダー

エンコーダは7S-400-2MC-50-00Eを採用しました。

www.piezon.co.jp

最近はホール素子を使った磁気式エンコーダーを採用する機体が多いです。私も昨年度まで同様の構成でしたが、磁気式エンコーダは素子と磁石のアライメントを確保するのが難しく、既製品相当の精度を出すのが困難なので今回は既製品の光学式エンコーダーを採用しました。

また、エンコーダは許容回転数が決まっているため、機体のカタログスペックから計算してスパーとのギヤ比を決定しました。

回路上気を付けるべき点として、出力がオープンコレクタなので適切な抵抗値でプルアップする必要があります。今作では470Ω抵抗で5Vにプルアップして使用しました。

 

●壁センサー

壁センサーの素子は受光側がフォトトランジスタ(ST-1KL3A)、発光側が赤外線LED(SFH4550)です。これは殆どのクラシックマウスが採用しているものです。

特徴としてはどちらも発光/受光強度のピークが半減する半値角が狭い点があります。この指向性が高い特性がマイクロマウスの壁センサーとして採用するに都合がいいため採用実績が多いです。赤外線LEDには黒色の熱収縮チューブを巻いて赤外線の漏れを減らしています。

また、横壁センサーの配置は内向きにして左右の光軸がクロスするようになっています。壁センサーは壁切れを見るためになるべく遠くを見るように配置したいですが、外向きに配置した場合、遠くを見るようにすると壁への入射角が浅くなるため、壁制御などに悪影響があります。内向き配置の場合、センサーと壁の距離が離れるため入射角を緩くすることが出来ます。自分の場合、旋回中心から約120mm程度で壁切れを検知できる配置にしています。

今作は横壁センサーが別基板に分かれており、メイン基板とフレキケーブルで繋ぐ構成をとっています。これはメカ編で述べたクラッシュ対策の一環で、変形部をフレキで繋ぐことで衝撃が基板に伝わらないことを狙っています。

 

●UI

UIにはLED8個とスピーカーのみです。

LEDは視認性とデザイン性に配慮して機体後部に配置しています。色は昨年まで青色を使用してましたが今年は青緑色のLEDを見つけたので使ってみました。青より目に優しく独特の色味で気に入っています。

akizukidenshi.com

スピーカーはSMT-0340-T-Rを採用しています。とにかく実装面積を少なくしたかったので小型のスピーカーを採用しましたが、小型のスピーカーは音量が個体ごとに差があるので何個か選別しる必要があります。

www.mouser.jp

また、入力I/Fはタクトスイッチなどの物理ボタンを付けるのが一般的ですが、実装面積に余裕がないので省いています。代わりに機体を振った時の角速度をジャイロセンサーで計測することで操作しています。

 

●UART端子

MCUへのプログラムやパラメータの書き込み、走行ログの吸出しはUARTでPCと通信しています。この端子は頻繁に抜き差しするため、その用途に適したコネクタでないと端子部が劣化し接触不良が発生していまいます。今作ではUART端子にマグネットコネクタを採用しました。これは片方がポゴピンになっており磁石で端子同士が押し付けられるもので、頻繁に抜き差しする用途に適しています。ただしサイズが大きいのでクラシックマウスサイズでも実装はやや難しかったです。マイクロマウスサイズには市販品だと流石に厳しいため別のコネクタを使うか、ポゴピンだけバラで購入して端子部を自作することになりそうです。

↓基板とカーボンフレームに挟まれた部品がマグネットコネクタ

 

●シルク矢印

機体先端と後部には矢印のマークがシルク印刷されています。

これは機体のターン調整時に中心を捉えるためにつけています。

 

次回はソフトウェア編です!